(株)スポーツシッター・ジャパンは「スポーツの先生とお留守番」というコンセプトで、運動遊びを充実させた屋外型シッターサービスを提供しています。スポーツの先生がシッターとして学校や塾にお迎えに行きます。その道中に公園やプールに立ち寄り公園遊びやスポーツ指導を行うことで従来の屋内型シッターサービスにはない、健やかで楽しいお留守番を実現しています。
 文字通り、スポーツインストラクターとベビーシッターの要素を兼ね備えていることから「スポーツシッター」という自社ブランドを打ち出しています(平成24年商標登録済)。留守番の間に体力向上やできなかった運動の成功体験といったプラスαの効果を与え、単に子供を預かるだけでなく、「できた」が増えて帰ってくる、そんな育児支援サービスを提供しています。
 主なターゲットは、共働き家庭やひとり親家庭です。仕事のため下校時間や託児所の閉園に間に合わず、子供のみの留守番や延長保育が必要な場合を想定しています。また、従来のシッターサービスにあった事前予約制を廃止し、当日の急な残業や家族の体調不良にも迅速に対応します。
 このことは働く両親が安心して仕事に集中したり、逆にご夫婦で出かける等の時間の捻出に貢献しています。

落合代表取締役は、会社を起業する前、スポーツクラブで11年間水泳や体操のグループレッスンを行ってきました。累計1万人を超える子供たちの健やかな成長に大きなやり甲斐を感じていました。
 しかし、成長の遅れや親の都合で、クラブ通学を断念せざるを得ない子供たちが少なからずいることに無力感も感じていました。
 ある日、退会手続きをする母親から息子への想いを聞く機会がありました。母親は父親を亡くしたふたりの子供を養うため仕事が忙しく、子供自身も心臓病の既往歴があって周囲のペースについていけませんでした。
「シッターさんのようにいつでも子どもを預かってくれて、なおかつ運動で体力をつけてくれる人なんていないかしら?」という、母親の思いつめたような一言を受けてスポーツシッタープログラムの開発をスタートしました。
 その後、クラブ通学を断念した子供たちに声をかけ、スポーツの個人指導から試験運用を開始しました。
それまでのグループレッスンでは子供一人ひとりに向き合う機会は非常に少ないものでしたが、パーソナルレッスンによって個々の個性や成長に合わせた指導が可能となりました。また、その前後で学校から自宅までの送迎や食事の提供を行ったことで、親の都合で通学を断念した子供たちの喜びの声が多く聞かれるようになりました。
 同社の強みは、子育ての悩みと子供の体力低下を同時に解決することです。社会問題のひとつである子供の体力低下は、外遊びの減少が原因であると言われています。特に遊ぶ空間や遊び仲間、遊び時間などいわゆる「3間」の減少があげられ、そのため小児生活習慣病やゲーム・ネット依存症、睡眠障害、引きこもりといった深刻な弊害も引き起こしています。
 室内での子守りが中心だった従来のシッターサービスに運動遊びやスポーツ指導を取り入れ、スポーツの先生が仲間の一員となることで子供は運動の楽しさを感じます。公園や空き地の安全な利用方法を指導することで活動可能空間を生み出しテレビやゲームの時間を健やかで、楽しい運動の時間に変える取組みを行っています。
 また、スポーツシッターは単にスポーツの先生に留まらず、家族に寄り添う良き相談相手としての役割があります。利用後のアンケートによると、問合せのきっかけは「本当は育児の悩みを聞いてほしかった」という声が最も多く、継続の決め手は担当者の人柄という声が9割を超えます。
 核家族化が進み隣近所の名前も知らないことが多い現代社会において、気軽に育児の悩みを共有できる存在は乏しく、道をたずねるだけで不審者情報が流れる地域においては、子供にとって本当に信頼できる大人の存在は貴重であるという安堵の声も少なくありません。
 子供たちが安心してくつろいでいる時、夢中になって運動をしている時にふと「パパ、ママ」とスタッフを呼んでしまうことがあります。子供たちはとても照れくさそうにしますが、スタッフにとっては子供の信頼を得た最高に嬉しい瞬間であるそうです。
 その人柄の基礎となるのが、青春時代にスポーツに取り組んだ経験と自身の子育て経験が大きいと言えます。落合代表は米・マイナーリーグで投手として活躍し日米のスポーツ文化を学びました。働きながら5人の子供を育てたスタッフも在籍しています。
 若くして体調に不安を抱える双子を授かったある母親は、これからどうしたらいいかわからず部屋にこもりがちだったと言います。しかし、双子を育てた経験を持つスタッフの訪問に安心と勇気を感じ、今では揃って公園遊びに出かけるほど明るく元気に成長しました。
 また、車椅子で生活をするある男の子の父親は立て続けにシッター会社から派遣を断られ、ダメ元で同社に問合せをしたと言います。しかし、同社は同じく障がい児の子育て経験があるスタッフを選任し、落合代表は障がい者スポーツ指導員の資格を取得して万全の体制を整えました。
 子供たちの安心と信頼はこれまでに指導してきた様々な運動種目にも現れています。思春期を迎えた高学年の男の子は、運動会で恥ずかしい思いをしたくないとパン食い競走の練習について相談してきました。
 当日は二人でおもちゃの釣り竿を作り、落合代表が滑り台の上からアンパンを吊るしてかじりやすい角度や引っ張る強さを練習させたとのこと。練習後は歯を立てないかじり方やちぎれにくい力の強弱を本人自ら発見し、運動会では見事に1位でゴールテープを切りました。

 

 近年、子供を狙った凶悪事件や教員による不祥事が度々取り沙汰される中、子供たちや親の恐怖や不安は計り知れません。しかし、スポーツシッターが引率の子供を公園に連れ出すとどこからともなく近所の子供たちが集まってきて、「一緒にサッカーしようよ」「逆上がりのコツを教えてあげるよ」といって声をかけてくれるとのこと。
 遠方の私立小学校に通う子供は初めて近所に友達ができ、スタッフは子供同士が教え合うコツに新たなノウハウを発見することもあります。ベビーシッターによる殺人や窃盗事件は、密室の子守りの危険性を知ることとなりました。しかし、屋外型シッターサービスは、地域全体の目で子供たちを見守ることができます。
 近年は娯楽の多様化やIT化により、ゲームやスマートフォンを持ち寄って公園のベンチに群がる子供たちの姿を頻繁に見かけるようになりました。
 しかし、スタッフはスポーツを通じた競争や助け合いを公園に取り戻し、液晶画面では伝えることができないキャッチボールやワンツーパスのコミュニケーションを子供たちにもたらしています。
 現在約30名の女性スタッフが活動しており、大学生から70歳の昔スポーツをやっていた元保育士までいますが、高齢の方は育児経験が豊富で、親御さんからみると誰に相談したら良いかわからないことに関して自分の子育て経験に基づくアドバイスを語ってくれるということでも人気を博しています。
 高齢化しても地域の方々に感謝される仕事であり子供たちに喜んでもらえて、かつ自分のスケジュールも会社に理解してもらえる仕事は高齢化する女性にとっても意義ある職場になっています。 (曽我太郎)

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