ワーク・ライフ・バランスを実現するためには、働き方を見直して、生産性を高め、労働時間を削減する必要があります。でも、具体的に日々の業務のどこをどう見直して生産性を高めていけば良いのでしょうか?

「中小企業のためのワーク・ライフ・バランス推進ガイドブック〜2017〜 〜持続的発展のための経営戦略として〜」では、第7章でワーク・ライフ・バランスの具体的な課題とそれを解決するための施策を整理しており、課題のひとつとして「非効率な会議を削減する」ことを挙げています。

会議は企業に必要不可欠な組織活動のひとつではありますが、非効率な会議が長時間労働の原因になっている場合が少なくありません。みなさんも日々会議に追われ、「会議がもっと効率化されれば早く帰れるのに」と思ったことがあるのではないでしょうか?

筆者は30年間、IT企業でさまざまな組織課題に取り組んできました。会議を見ればその企業の現在の状況がわかると言います。非効率な会議を繰り返している企業は、やはり生産性も低いと言わざるを得ません。逆にいうと、会議力を向上させることで、企業の生産性を高めることができます。ここからは、会議力向上の具体的なポイントを見ていきましょう。

 

①会議の目的を明確にする/会議の棚卸しを行う

「非効率な会議」と聞いて真っ先に頭に浮かぶのは、会議の途中で「あれ?そもそもこれは何のための会議だったっけ?」と思ってしまう会議ではないでしょうか。会議の目的やゴールを明確にせずに行われる会議は意外に多いものです。特に、以前から月次や週次で定例的に開催されている会議は、当初の主旨が忘れ去られ、会議のための会議になっているケースが少なくありません。

これを改善するために、「会議の棚卸し」をすることをお勧めします。月次や週次でどのような会議があり、それぞれの会議の目的や開催頻度、参加者や進め方などを一覧表にして、不要な会議がないかをチェックします。その結果、会議の内容にダブリが見つかって、ひとつの会議にまとめられるケースもありますし、逆に、必要な会議が設定されていないことに気づくケースもあります。

新しい会議を設定する場合には、開催者が事前に会議の目的や参加者・進め方についてよく考えるようにします。その際、簡単な会議デザインシートを作成することをお勧めします。これを考えている時点で、会議を開催する必要がないことに気づく場合も少なくありません。

会議の目的・参加者・進め方については、会議開催通知に記載すると共に、会議の冒頭でも開催者からあらためて説明し、各参加者に会議の主旨をよく理解してもらうようにします。これによって、目的に向かった議論に集中し、話題が横道にそれることを防ぎます。

以上のように、まず、会議の目的を明確にし、会議の棚卸しをすることで、非効率な会議の断捨離をするところから始めてみましょう。

 

②会議時間を短くすれば良いというわけではない

連絡する会議、報告する会議、決定する会議、議論する会議、交流する会議、等々、会議にはさまざまな目的があり、それによって、なるべく時間を短くした方が良い会議もあれば、もっと時間を取るべき会議もあります。

会議の生産性を高めることを考えた場合、生産性=アウトプット/インプットとなるので、インプットである会議時間はなるべく小さく、アウトプットである会議の目的達成度はなるべく大きくなるよう留意するわけですが、会議時間を短くすることばかりにとらわれると、議論が不十分で目的が達成できない中途半端な会議になってしまう場合があります。

具体的には、連絡や報告が目的の会議は情報伝達の正確性や効率性を重視して、なるべく時間を短くできないかを考えます。一方、議論や交流が目的の会議はじっくり時間を取った方が良い場合があります。今後、多様性や創造性が求められる議論のための会議や、チームの関係の質を高める交流のための会議の重要性が増していくと考えられ、そのような会議の場合には時間を十分にとる、いわば「急がば回れ」の考え方をする必要があります。

以上のように、会議の目的に応じて時間の考え方を変えることが重要で、なんでもかんでも時間を短くすれば良いという対応をとると、逆に生産性が低下してしまいますので注意が必要です。

 

③ホワイトボードを積極的に活用する

会議中、ホワイトボードに会議の目的や参加者の発言内容などを板書することで、会議の生産性は大きく向上します。「会議の議事メモはパソコンで入力しているので、ホワイトボードに板書する必要はない」という声が聞こえてきそうですが、それは違います。

ホワイトボードに板書する目的は、会議の議事メモを残すことだけではありません。発言内容などを板書することで見える化し、参加者全員が理解を深めるのを助けるという重要な目的があります。

こういうケースがよくありませんか?会議中、参加者のAさんとBさんがお互いの意見を言い合っていて、それに長い時間を費やした挙句、よくよく聞いてみればAさんとBさんの結論は同じで、お互い違う切り口で話をしていただけだったというようなことが。

これは口頭だけで言い合っている(いわゆる空中戦をしている)ために起こっていることで、AさんBさんの発言を誰かがホワイトボードに板書して見える化していれば、もっと早くAさんとBさんは同じことを言っているということに気づけたはずです。

慣れていないと、ホワイトボードに板書するということが面倒に思えるかもしれませんが、会議の生産性を高めるためには、積極的にホワイトボードを活用していくことが重要です。

 

④会議の目的に応じて進め方を変える

会議の目的によって、会議の進め方を変えることも重要です。たとえば、ある商品開発部門で部門長が管理職を全員集めて、これまでにない新しい商品についてアイデアを出し合う会議を開催したとします。まず部門長が会議の主旨を説明した後、「では、右手の○○課長から順番に自分の意見を言いなさい」と指示し、出た意見に対して部門長が「それは誰が買うのかね」とか「それは誰が作るのかね」といったダメ出しを始めたとしたらどうでしょう?みなさんがこの会議の出席者ならどういう気持ちになりますか?「これは意見を言った方が損だ」と思って黙っちゃいますよね。これでは新しい商品のアイデアはなかなか出てこないでしょう。

上記は実際に筆者が体験した例なのですが、この部門長の会議の進め方にはどこに問題があったのでしょうか?それは、会議の目的に応じた進め方をしていないという点にあったと言えます。会議には「発散」する会議と「収束」する会議があります。

「これまでにない新しい商品のアイデアを出す」ことが会議の目的なので、参加者に思いつきレベルでも良いのでアイデアをどんどん出してもらう、つまり発散が目的の会議だったのですが、この部門長はダメ出しをすることでせっかく出た意見を潰してしまっています。

部門長は部下から出たアイデアに対するツッコミをなるべく控え、部下がアイデアを出しやすい安心安全な場の雰囲気を作るべきでした。もしこれが、試作品まで開発が進んだ試作品Xと試作品Yのどちらを商品化するのかを最終決定する会議、つまり収束が目的の会議であれば、この部門長のツッコミ多めの進め方はマッチしていたかもしれません。

このように、会議の目的によって会議の進め方を変えることが重要で、これを意識するかどうかで会議の生産性は大きく変わってきます。これについては、会議を推進するファシリテーターの力量によるところが大きいため、会議の重要性に応じて、社内ファシリテーターの育成や外部ファシリテーターの活用を検討してみても良いかもしれません。

 

ここまで、会議力向上の4つのポイントを見てきました。どのような企業でも会議はあるにもかかわらず、会議の仕方について学んだことがあるという人はあまりいません。そのため、本人も気づかずに非効率な会議を繰り返している場合が少なくありません。逆に言うと、会議力を向上させて、生産性を高める余地がどの企業にも残されているということになります。ワーク・ライフ・バランス実現の具体的な手段として、貴社でも会議力の向上に取り組んでみませんか。

 

【執筆者プロフィール】
小久保 和人(こくぼ かずと)
KOKコンサルティング 代表(ホームページ:http://kok-consulting.com)
1963年生まれ。三重県出身。日本電気株式会社(NEC)で30年間さまざまな組織課題に取り組んだ後、中小企業診断士として独立。専門領域は会議力向上/組織開発/エグゼクティブコーチング/研修・セミナー等。共著「企業内診断士の可能性」同友館2012年発刊。

  • 一般社団法人 東京都中小企業診断協会 中央支部所属
  • 東京都中小企業診断協会認定 組織開発研究会 副会長
  • 特定非営利活動法人 東京都港区中小企業経営支援協会所属