1.セミナーの概要

1-1 開催概要

港区区内中小企業経営者、人事担当者等を対象に、広くワーク・ライフ・バランスの周知を図る講演会と導入に繋げるセミナーを一体化した「講演会・セミナー」を開催した。

今年度、「講演会・セミナー」は、平成30年10月と平成31年2月頃の2回開催予定であり、今回は、その1回目の開催である。

◆開催日時:平成30年10月2日(火) 18:30~21:00
◆開催場所:港区立港勤労福祉会館 第一洋室
◆主催者:港区産業振興課港勤労福祉会館
◆講  師:株式会社Will Lab 代表取締役  小安美和氏

平成29年3月当社設立、自治体や企業と連携し、女性の雇用・就労促進、働き方改革支援を行うほか、女性の自立・就労支援のためのハンディクラフトショップを港区・白金台で運営

◆講演テーマ:「これからの働き方改革 ワーク・ライフ・バランスからワークイノベーションへ」
◆参加者数:31名
◆アンケート回答数:25名

 

1-2 開催構成

第一部 18:30~20:20
◆挨拶        (港区産業振興課港勤労福祉会館 館長 上嶋英治氏)
◆港区ワーク・ライフ・バランス推進企業認定事業について
(港区総務部総務課人権・男女平等参画担当 二宮崇浩氏)
◆講演 「これからの働き方改革 ワーク・ライフ・バランスからワークイノベーションヘ」(株式会社Will Lab 代表取締役  小安美和氏)

<休憩10分>

第二部 20:30~21:00
◆ワーク・ライフ・バランス何でも相談会

 

2.セミナーの内容

2-1 内容概要

株式会社Will Lab 代表取締役 小安美和氏による、「これからの働き方改革 ワーク・ライフ・バランスからワークイノベーションヘ」の講演を実施しました。

少子高齢化による労働人口減少に対応するためには、多様な人材の活用や生産性向上が必須であるという考えのもと、その推進策について事例紹介を交えてお話しいただきました。

〔株式会社Will Lab 代表取締役  小安美和氏〕

 

2-2 内容詳細

Ⅰ.人生100年時代 ~大きな転換期の入口にある日本~

(1) 「3ステージ型」から「マルチステージ型」へ

リンダ・グラットン氏の著書「ライフ・シフト 100年時代の人生戦略」(2016年10月、東洋経済新報社発行)によると、人類の平均寿命が100年に到達することで、従来の3ステージ型ライフプランは崩壊すると言われています。

3ステージとは、「教育→仕事→引退(老後)」を指しますが、長寿化により、これがマルチステージ型に移行すると予測されています。すなわち、「仕事」の期間がこれまでよりはるかに長くなるということです。

一説には、「2007年に日本で生まれた子どもは、 107歳まで生きる確率が50%」とも言われています。この長寿化の流れに対応するにはどうするか。個人は生き方そのものを変えないといけない、社会の仕組みも変えなければいけない。そして企業は、人事ポリシーを見直さないといけないでしょう。

 

(2) 何がどのように変わるのか

変わるものは以下の3つと予測します。

①人口
②テクノロジー
③価値観

①は、人口減少と少子高齢化が原因です。2040年には全国的に人口は減少すると予測されています。東京都の場合、若い世代の人口減が顕著です。もっとも港区は人口増が予測されていますが、全国的には非常に珍しいことです。

ワーク・ライフ・バランスは、現在は子育て中の女性のものという認識が強いようですが、10~30年先を見据えると、むしろシニア層が企業勤務し続けるための施策となるかもしれません。

②に関しては、「10~20年で日本の労働人口の約49%が技術的には人工知能等で代替可能になる」と予測されています(出典:野村総合研究所)。今でも生産性向上に資するツールはたくさんあり、ある程度は人口減少を補うことはできるでしょう。一方、テクノロジーの進化に関わらず生き残る仕事とは、「創造性、協調性が必要、非定型的」な業務と思われます。本日参加の経営者、管理者のような仕事はなくならないでしょうし、そこで必要とされる意思決定力は今後も磨き続ける必要があります。

③は、主に若い世代の価値観の変化に着目する必要があります。たとえば、2000年以降に社会人になった世代と、それ以上年上の世代とでは、価値観はかなり違います。前者は、「9.11」やリーマンショック、東日本大震災を経た世代であり、「どんなに頑張っても一気に失われてしまうものがある」という現実を目の当たりにしています。

したがって、この世代に対して「自分の時代はこうだった」と押し付けると失敗します。特にワーク・ライフ・バランスに関して言えば、若い男性も大事にしており、それを前提としたマネジメントを心がけなければなりません。

 

Ⅱ.これからの働き方改革 
~ワークライフバランスからワークイノベーションへ~

労働力不足が企業成長の障害となりうる今後の世の中において、ワーク・ライフ・バランスへの配慮は優秀な人材を採用するために重要です。ここを軽んじると、「労働市場で選ばれない企業」になってしまいます。

もっとも、すでにワーク・ライフ・バランスは「当たり前の話」になっており、先を行く企業は次のステップである「ワークイノベーション」に取り組んでいます。

ワークイノベーションとは、「多様な人材、働き方の組み合わせで企業の生産性向上を考える」ことです。これまでは、「企業の方針についてこられなければ、辞めてもらって、新たに採用すればよい」という考えでも通用しました。しかしこれからは、「抜けたら入らない」を前提にすべきです。加えて、フルタイム働ける人材だけでなく、「短時間しか働けなくても、スキルのある人材」に注目すべきでしょう。パートタイム労働やテレワークなど、フレキシブルな働き方を組み合わせて、トータルでいかに企業の競争力を落とさないかが求められるのです。

また、休暇についてもバリエーションを持たせ、制約があっても働き続けられるような環境整備が必要でしょう。学び直しの休暇、病気治療休暇、不妊治療休暇など、多様なニーズに対応することが、企業には求められています。


〔講演内容より〕

 

Ⅲ.ワークイノベーション事例

(1) 岩手県釜石市の事例

岩手県沿岸地域では東日本大震災を境に労働力不足が深刻化していました。しかし釜石市の場合、無職の主婦は2千人、無職のシニアは9千人おり、彼らが全員働くと労働力人口は1.6倍になるということがわかりました。そこで、潜在的な労働力の掘り起こしを狙うため、
①保育サービスを量・質ともに向上させること
②家庭で家事・育児をシェアすること
を前提に、
③企業には、制約のある人材でも働けるような仕組み・時間帯を作ること
④求職者には就労に向けて一歩踏み出すよう支援すること
⑤企業と求職者のマッチングのきっかけとなる場を創出すること
の仕組み化を試みました(小安氏は釜石市地方創生アドバイザーとして当事業を支援)。

結果として、「週3日、1日2時間からでもOK」といった「プチ勤務」で人材を確保するような企業も現れてきています。今後、この取り組みが広がることが期待されます。

 

本事例より、マッチングに当たっては、
①求職者の不安を解消すること
多様な働き方を提示するとともに、仕事内容の表現を工夫する
②面接に当たっては、「会社を応募者が見極める」と認識すること
どんな仕事ができるようになるのか、任せたい仕事の責任度合はどのくらいか、ロールモデルがあるならその具体例の提示
③育成に当たっては、働く人のニーズとマインドに寄り添うこと
全体のなかの仕事の位置づけを説明し、モチベーションを高める、
働きやすい環境の提供とフェアな評価の実施
が重要であることを実感しています。

 

(2) 神奈川県横浜市の事例

横浜市では、中小企業向けに女性リーダー育成プログラムを実施しています。 「子育て中だし、ブランクがあるし、自信がない」と尻込みする女性に対し、有効なマインドセットとスキルセットを行い、併せてネットワークの構築支援も行っています(小安氏は講師として当事業に参画)。

「印象に残っている女性は、初めは人前で話すことすらできなかったのに、プログラム終了時のスピーチで『私は中小企業で大きな歯車になりたい』と話せるようになった人です。自身のリーダーシップのあり方を見直してくれたのだと思います」(小安氏)

 

(3) 兵庫県豊岡市の事例

豊岡市は人口8万人であり、大企業はなく、主要産業は旅館業、鞄関係の産業。中小企業は人材不足に悩んでいます。そこで、「ワークイノベーション推進会議」を立ち上げ、人材確保のための環境整備や人材育成を推進していくこととなりました(小安氏は当事業を豊岡市から受託)。

小さな企業一社ではできることは限られていますが、それなら地域の複数企業で連携していこう、というのがこの取り組みの趣旨です。特に今や少数派となってしまった若者を、企業を超えて交流させ、切磋琢磨させて成長を促進しようと、ワークショップなどを進めてきました。これから民間主導で、自主的な取り組みが行われる予定です。

 

(質疑応答:なし)

〔会場全景〕